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家族性高コレステロール血症について

先日の第4回TECOM模試で家族性高コレステロール血症LDLアフェレーシスなど、脂質異常についての問題がたくさん出題されていましたので復習を兼ねてまとめていきます。

 

 

その前にまず必要最低限の知識を記載します。

 

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・脂質とは、遊離脂肪酸やトリグリセライド(中性脂肪)、リン脂質、コレステロールエステルや遊離コレステロールの総称をいう。

・脂肪酸やコレステロールはその脂質の構成要素のひとつ。

・アポ蛋白とは、血液に溶けない脂質を血中に溶かすために脂質を囲む蛋白質の事であり、アポ蛋白や極性脂質、脂質の結合体をリポ蛋白という。

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・リポ蛋白は、超遠心分離による比重の違いによりカイロミクロン(CM)、VLDL、

IDL、LDL、HDLに大別される。

・Ⅱa型、Ⅳ型などの脂質異常症の分類は、WHOによる表現型分類であり、疾患と一対一で対応しているものではない。

 

以上を踏まえたうえで、

家族性高コレステロール血症(FH)についてまとめます。

 

・FHはLDL受容体の異常により高LDLコレステロール血症をきたす常染色体優性遺伝(AD)の疾患である。

・WHOによる脂質異常症の表現型分類ではⅡa型、もしくはⅡb型に属する。

・LDL受容体が異常、または欠損しているためLDLを肝臓や末梢組織に取り込めなくなるため血中LDL値が増加するのがFHの病態である(Ⅱa型)。

 ・遺伝型はホモ型とヘテロ型があり、ホモ型は100万人に1人、ヘテロ型は500万人に1人といわれている。

・ホモ型は新生児から著名な高コレステロール血症をきたし、全身の動脈硬化症を合併し、平均37歳で死亡してしまう。

・ヘテロ型はホモ型よりも予後が良好だが動脈硬化を高率に発症し、約70%が65歳までに死亡する。

・特異的な症状は腱黄色腫皮膚結節性黄色腫若年性角膜輪である。

 

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 (診断)動脈硬化疾患予防ガイドライン2012参照

〈成人(15歳以上)FHヘテロ接合体の診断基準〉

①高LDL-C血症(未治療時のLDL-C 180 mg/dL以上)

②腱黄色腫(手背、肘、膝などの腱黄色腫あるいはアキレス腱肥厚)あるいは皮膚結節性黄色腫

③FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(2親等以内の血族)

・続発性脂質異常症を除外した上で診断する。

・2項目以上が当てはまる場合FHとする。

・皮膚結節性黄色腫に眼瞼黄色腫は含まない。

・アキレス腱肥厚は軟線陰影により9mm以上で診断する。

 

〈小児FHヘテロ接合体の診断基準〉

①高コレステロール血症:未治療時のLDL-C 140 mg/dL以上

 (総コレステロール 220 mg/dL以上の場合はLDL-C値を測定する)

②FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(2親等以内の血族)

・小児の場合、腱黄色腫などの症状に乏しいため、診断には家族のFHについて診断することが重要。

 

〈FHホモ接合体の診断〉

TC 600 mg/dL以上、小児期からの黄色腫と動脈硬化性疾患、両親がFHヘテロ接合体であることより臨床診断が可能。TC 600 mg/dLの場合も疑わしければ専門医による診断、治療方針の決定を行う。

 

(治療)

食事療法(低脂肪食)

①ヘテロ接合体の場合

薬物療法:HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)が第一選択。症状に応じて陰イオン交換樹脂、エゼチミブ、プロブコールを使用。

②ホモ接合体の場合

LDLアフェレーシスが第一選択。

*LDL受容体がほぼないためスタチンはあまり効果がない。

 

以上がFHのまとめになります。

おまけ...

*発疹性の黄色腫はTGが高いときに見られる所見であり、カイロミクロンが増加すると認められることが多い。よって、Ⅰ型脂質異常症にて良く認められる。

 

*手掌の黄色腫はⅢ型脂質異常症にて特徴的である。

 

 

 

テコ4で出題されていたのでおまけでLDLアフェレーシスについてもまとめます。

国試的にはその適応を押さえておけば良いと思います。

・LDLアフェレーシスの適応について

①家族性高コレステロール血症(FH)ホモ接合体・ヘテロ接合体

② 薬物治療に反応しない閉塞性動脈硬化症

③ 薬物治療に反応しないネフローゼ症候群、特に巣状糸球体硬化症(FGS:focal glomerular sclerosis)

 

参考文献

・病気が見えるvol.3 内分泌・代謝・糖尿病

・year note 2014

・大阪大学腎臓内科

http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/kid/kid/care/ldlApheresis.html

 

記載ミスについては十分に注意していますが、誤りがあった場合はコメントにて報告してくださるとうれしいです。

なお、当記事は主に医学生を対象にしたものであり、医学的助言を行うものではないという点をご理解ください。